私は学生時代に機械工学が専門だったお陰で、この原理が非常に簡単に飲み込めた。
金属にしろ、食品にしろある一定以上の力を組織に加えると組織細胞は破壊する。
例えば、刀を鍛える状態を想像しよう。
熱く熱した刀の金属を槌で叩いて鍛える訳だが、熱して柔らかくなった状態から鍛えていく段階で段々硬くなっていく。
そしてある一定以上硬くなって来ると、それ以上鍛えられない状態になる。
これは外部から刀の金属に外力を加えて行くと、金属内に内部応力(インナーストレス)が発生して金属を硬くしてしまう為である。
内部応力が発生して、それ以上鍛えられない状態なのに無理をして鍛えると、内部応力の限界を超えて組織が破壊し、刀が割れてしまう。
この様に物体に外部から力を加えると内部には必ず内部応力が発生する。
この内部応力が耐えることの出来る限界内であれば問題無いが限界を超えると組織を破壊するのである。
そして発生した内部応力を緩和するのが麺で言えば、熟成である。
これを判りやすく人間に例えてみる。
我々毎日一生懸命に働いている。
一日働いたら疲れる。
この疲れた状態が、身体の中に内部応力が発生した状態と言える。
毎日、疲れた体を睡眠を取ることで回復して元気になれる。
この睡眠を取り、回復する工程が熟成と言える。
もし、睡眠を取らずに連続して働くと過労死になったりする。
要するに熟成を充分取らない麺の製法は麺生地が過労死しているのだ。
だから、コツンと硬いだけの粘りの足りない麺になり易い。
但し、鍛え工程で充分鍛えてそれから熟成することが重要だ。
鍛えの足りない麺は人間で言えば、もやしっ子の様なもので、これも決して美味しい麺にはならない。